製品と技術 SoundWater製 Orcas™ Ultrasonic Flowmeter

次世代型ワイヤレス超音波流量計SoundWater製 Orcas™ Ultrasonic Flowmeter
クランプオン式で配管工事不要、スマホでデータ管理
超音波流量計は設置が容易ながらメンテナンスも少なく、近年では流量計市場のトレンドとなっている。特にクランプオン式の超音波流量計は配管工事も不要なことから設置にかかるコストを低く抑えられ、オイル&ガス、水処理施設などでの使用状況は増加傾向にある。 SoundWater Technologies, LLC社(米国)で開発・製造された「次世代型ワイヤレス超音波流量計」Orcas™(オーカス)シリーズ(以下Orcas)は、Bluetoothでセンサー本体とスマートフォンをペアリングし、流量の確認や配管情報の入力などをスマートフォンにインストールした専用のアプリを介して行うことができ、全ての操作をアプリ上で簡単に行うことが出来る。本稿では、時間短縮と使いやすさを追求し設計されたポータブルタイプの次世代のワイヤレス超音波流量計について紹介する。
1.Orcasの基本構成

1.1 製品概要
1.2 計測原理
1.3 製品特徴
(1)Bluetooth®
OrcasからBluetooth4.0(BTLE)ワイヤレス通信でスマートフォンとペアリング。約5m離れたところからでも流量確認が可能。
(2)充電式バッテリー
USB駆動のバッテリー(連続使用12時間)を搭載、付属のUSBケーブルで給電しながらの使用も可能。
(3)マウンティングストラップ
配管への固定はEPDM製のマウンティングストラップを用い、僅か数秒で取り付け及び取り外しができ、垂直・水平どちらの配管への設置が可能である。(写真3)
1.4 製品仕様

(1)モデルコード別、対応配管外径と配管材質
Orcasは10種類にモデルコードを分け、計測する配管外径と配管材質への対応をしている。
(2)測定流速
全てのモデルに於いて、流速が0.03~20 m/sまでの範囲での測定が可能である。

(3)測定精度
測定精度は、配管サイズにより異なる。第2表に配管サイズ別の測定精度(直線性と再現性)を示す。
(4)使用環境
Orcasは、-40~100 ℃までの流体及び配管温度の計測が可能であり、周囲環境の温度は、-40~60 ℃までの使用が可能である。
(5)保護等級
IP65の防塵防水性能を持ち、屋外でも問題なく使用が可能である。
(6)カップリングゲル
一般的にクランプオン型の超音波流量計は、配管内への超音波の伝搬感度を上げるためにトランスデューサー部にグリスやゲルを塗布する必要がある。Orcasも同様にゲルを塗布が必要である。Orcasはそのポータブル性を重視し、人畜無害で乾燥しやすいゲルを使用している。
※姉妹品のCypressシリーズ(後述)は、据え置き仕様であるため乾きにくいシリコンゲルが用いられる。その他、ゲルフリーのトランスデューサーのオプションも可能である。
(7)流体の選択
アプリ内の「Liquid(液体)」を選択するとデフォルトでアプリ内に入っている液体リストから、実際に計測する流体を選択することが出来る。リストに無い流体を流す場合は、カスタムで流体の音速や粘度、密度を入力することで自由に設定が可能である。

(8)表示モード
Orcasアプリの計測画面の表示は、「瞬時流量」「積算流量」「音速」「流速」の中から任意の表示を2つ同時まで表示可能で、ドラッグアンドドロップで設定が出来る。

(9)診断モード
Orcasアプリは配管設置時の配管内部へ伝搬している超音波が、どの様な状態にあるか診断が出来る。
これは超音波流量計を設置し計測する際、実際には配管内部の状況が解らないため、
流体は流れているのにも関わらず計測が出来ないケースに於いて非常に役立つ情報を確認することが可能である。

診断メニューのSNR(信号対ノイズ比)という値を確認することで、Orcasを設置した箇所が測定に適しているか否かの判断が可能である。配管の内部が腐食している箇所へ設置してしまった場合、超音波パルスにノイズとしてトランスデューサーに受信される。この時のSNR値を確認することで、計測が可能な箇所かどうかの判断が出来る。これにより設置位置を見直すことで、適切な設置位置の検索が可能である。 このSNR値は15db以上が望ましく、ノイズの影響を受けていない正常な配管への設置の場合、超音波の波形はフラットとなり(写真内B)、流体が流れた場合には(写真内A)の様な波形となる。

(10)データロギング
Orcasアプリにはデータロギング機能がある。
ロギングは選択したロギング時間に基づいてサンプリング期間を自動に設定し、収集されたデータのファイルはスマートフォン内に保存されcsvファイルで取り出すことが可能である。

(11)小口径と大口径モデル
Orcasは前述の通り配管サイズにより10種類にモデルコードを分けているが、一番小さいモデル:ORCAS-T42-C2及び大口径モデル:ORCAS-T31-CMとORCAS-T41-CMは配管への取り付け方法が、項(3)で紹介したマウンティングストラップの形状及び取り付けが若干異なる。
小さいモデルのORCAS-T42-C2は、製品が短くなるため1つのマウンティングストラップでの取り付けになる。
Orcasの超音波測定法はほとんどがV法である一方、大口径ORCAS-T31-CMとORCAS-T41-CMは、Z法での演算及び設置となり配管へ挟み込む様な取り付け方法となる。

(12)Cypressシリーズ
Orcasの姉妹品にCypressシリーズがある、ポータブル性を重視したOrcasシリーズに対し、CypressシリーズはBluetooth通信の利便性を備えたまま据え置き型の利点も活かしたものとなっている。Orcasシリーズとの大きな差は、外部電源(DC12~24V)で駆動し4~20mAのアナログ出力、若しくはMODBUS RTU RS485のシリアル通信出力を備える。また、Cypressシリーズを2台同時使用できる壁掛けタイプの表示部FC100と接続することで、2ラインある流量の合算表示や混合ラインの流量制御などの使用が可能である。
2. 実際の現場での活躍事例
骨材プラント
砂利や砕石・砕砂を製造する工程に於いて、砕いた石を洗浄するのに清水を用いる。その際の流量の管理にOrcasが活躍している。実際には清水の流量だけでなく、少し濁った濁水の計測も行っている。
ステンレス鋼製造ライン
ステンレス鋼を製造する工程に於いて、酸洗い用に使用する色々な酸の流量確認にOrcasが使用されている。工場より排水する際、規定濃度まで薄まっているか原水の量と酸の量を計測し濃度を求めている。
給排水配管
大型工場の高所にある給排水配管に於いて、配管の老朽化による漏れの箇所を特定するために複数個所に超音波流量計を設置し流量計測している。既存の超音波流量計では、設置に高所作業車を用い、地上より4~5m程の高さにある配管の流量を複数個所で測定し、計測の都度、高所作業車を移動し流量計の取り付け及び取り外しを繰り返し測定していた。 Cypressシリーズを計測箇所に設置することで、地上よりBluetooth通信での流量確認が可能なため、高所作業車の手配及び取り付ける作業も必要なくなり作業者の安全も確保されている。

おわりに
本ページでは、Orcasの製品特徴と実際に活躍している現場事例の一部について紹介しました。
今後さらにOrcasが数多くの現場に於いて工数削減に寄与するものと考えています。当社はSoundWater Technologies, LLC社の日本代理店として、今後も多様化していく現場のニーズに応え続けられるサービスの向上や製品の付加価値の提供に努め、ユーザーの要求に素早く対応できる様、より一層積極的に取り組んでいく所存です。
・本文中に使用されている会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。
<参考文献>
(1) (一社)日本電気計測器工業会:流量計の正しい使い方、日本工業出版株式会社(1988.9)
(2) James W.Bowen; “Fundamentals of ultrasonic flow meter”(2001)