抵抗温度計と熱電対の応答時間2025.10.28
 
温度センサの応答時間は個々のセンサによって異なり、測定対象物の温度を計測するために要する時間がセンサによって異なってきます。しかし、応答時間とは何を意味し、どのように決定され、どのような基準で定められるのでしょうか?
応答時間とは何か?
応答時間とは、温度センサが測定対象物の温度変化に応答する速度です。応答時間は通常、T63とT90という2つの異なる値で表されます。
ここで、Tは時定数タウ(ギリシャ文字のτ)を表します。物理学において、時定数タウは簡略化された形で、ステップ応答が指数関数的な経過を示す動的システムの時間指標です。測定単位は通常秒を用います。
T63は、温度センサが測定対象の温度差の63%を測定するまでの時間を示し、T90は温度差の90%を測定するまでの時間を示します。この温度と時間の関係性は指数曲線であるため、媒体温度の63%に達するまでの時間が最も重要です。その理由は測定温度が実際の媒体温度に近づくにつれて、時間が長くなるためです(図1参照)。したがって媒体温度の100%に達するまでという値を決定することは意味がありません。放熱誤差のため、100%に到達することは事実上不可能です。
※放熱誤差の影響に関する詳細は、別のブログ記事で説明します。
 
温度センサの応答時間はどのように決定されますか?
熱応答時間は、流速0.2 m/sを超える水中、または流速3 ± 0.3 m/sの空気中で測定されます。 実際には、温度センサを25°Cのウォーターバスから90°Cのウォーターバスに浸します。両方のウォーターバスは基準センサによってモニタリングされ、試験対象の温度センサが水温に達するまでの時間を記録します。これにより、温度センサのステップ応答が得られます(図1の青線)。このステップ応答から応答時間を求めることができます。応答時間はグラフから求めることも、測定値から計算することもできます。 応答時間は、応答時間を測定した2つの温度で正しく規定されています。しかし、これらの温度がデータシートに記載されていることはほとんどありません。 この場合、25℃から90℃までの温度変化において、T63は1.2秒、T90は2.8秒です。
温度センサの応答時間に影響を与えるものは何ですか?
温度センサの応答時間は、以下の影響要因に依存します。
	・温度センサの設計 例えば、浸漬管の直径が小さいほど、温度センサは媒体の温度変化に速く反応します。
	・プロセスへの浸漬深さ 測定媒体の温度を可能な限り正確に測定するには、浸漬管を測定媒体に十分に浸漬させる必要があります。例えば金属製保護管センサの場合、直径の15~20倍以上の挿入長が必要と言われております。
	・測定媒体 温度センサは、気体媒体よりも金属媒体や液体媒体の方が温度変化に非常に速く反応します。これは測定媒体の熱伝導率(例:空気は熱伝導率が低い)の影響です。
温度センサの校正において考慮すべき点は?
校正は通常、標準温度計と校正対象のセンサを同じ安定した温度環境(恒温槽など)に置き、両者の指示値を比較して行います(比較校正)。温度校正器を使用する際は、温度校正器と校正対象センサの指示値を比較します。
校正対象センサの応答性が遅い場合、温度校正器の温度が安定した後でも、校正対象センサがその温度に完全に達するまでには時間がかかります。センサの指示が安定しきる前に読み取りを行うと、真の温度との差(校正誤差)を誤って評価してしまうことになります。
そのため、校正では被校正センサと標準温度計の両方が熱平衡に達し、指示値が完全に安定するのを待つ必要があります。また、複数のセンサを同時に校正する際にはそれぞれのセンサの応答性の違いについても考慮する必要があります。


