災害・減災に役立つセンサーとは?【24時間測り続ける小さな技術】インフラ監視からスマートシティまで

気候変動の影響によって予測が困難な集中豪雨が頻発する中、私たちの暮らしを守るために使われているのがセンサー技術です。実は、私たちが気づかないような場所で24時間休みなく街を見守り、危険の予兆をいち早く知らせてくれるセンサーが、減災や防災の現場で大きな役割を果たしているのです。今回は、災害から命を守るために欠かせないセンサー技術について、インフラ監視の現場での使われ方を分かりやすく解説します。
目次
「災害・減災に役立つセンサー」とは?

災害が発生する前、あるいは発生した瞬間に「今、何が起きているのか」を客観的な数値で正確に把握できるのがセンサーです。センサーは、人間の五感では捉えきれない微細な変化をデジタルデータとして抽出する、いわば「神経網」のような存在と言えます。
現在は手のひらサイズの高性能なセンサーが多数あるため、以前は不可能だったことが多数実現できるようになりました。
災害・減災センサーが果たす主な役割は、以下の3点に集約されます。
- 物理現象のデジタル化:水位、地盤の振動、建物の傾きなどの変化をリアルタイムで数値に変換します。
- 遠隔・常時監視:人間が立ち入ることが危険な場所や、深夜・早朝を問わず、24時間体制で監視を継続します。
- 迅速なアラート通知:あらかじめ設定した閾値を超えた際、即座に管理者や住民へ避難判断の材料となる通知を送ります。
センサーの最も重要な機能は、雨量や水圧、振動といった物理的な現象を電気信号に変えることにあります。たとえば、河川の増水を監視する水位計や、土砂崩れの予兆を捉えるための傾斜計などがその代表格です。これらは、ただ数値を測るだけでなく、そのデータをインターネット経由でクラウドに集約することで、「今、どこが最も危険な状態にあるか」を地図上で可視化することを可能にします。
命を守るセンサーは、どこを見ている?
センサーが監視している対象は非常に多岐にわたります。
豪雨の際、都市部において最も身近かつ急速に迫る脅威が、河川の氾濫や道路の冠水です。かつて水位計は大きな河川の主要な地点にしか設置されていませんでしたが、現在は、安価でコンパクトなセンサーが登場したことで、住宅地を流れる小さな川の状況もリアルタイムで把握できるようになりました。その結果、地域住民は自分のすぐそばにある川の危険度をスマホ一つで確認できるようになったのです。
また、目に見えない地下のインフラ、たとえば下水道やマンホールポンプ場の監視も極めて重要です。ここで活躍するのが、水中に沈めてその上の水圧から深さを算出する「投込式水位計」です。こうしたセンサーが、都市型水害を防ぐために地下深くでひっそりと、しかし確実に働いているのです。
インフラ監視の現場でも役立つセンサー【点検から常時見守りまで】

私たちが毎日何気なく利用している橋やトンネル、ダムといった社会インフラも、実は老朽化という避けては通れない課題に直面しています。こうした巨大な構造物の「健康診断」においても、センサー技術は欠かせない存在となっています。
これまでのインフラメンテナンスは、数年に一度、熟練の点検員が現地へ赴き、ハンマーで叩いた時の音(打音検査)や目視によって異常を確認するスタイルが主流でした。しかし、点検すべき箇所の膨大さと、深刻な人手不足が重なり、すべての場所を完璧にカバーし続けることは困難になりつつあります。そこで注目されているのが、センサーを用いた「常時モニタリング」です。たとえば、橋梁に光ファイバセンサや加速度センサーを設置することで、コンクリート内部の微細なひずみや、大型車両が通行した際の揺れ方の変化を24時間体制で記録できます。
普段から測っていることで災害時に効果を発揮する
「災害対策用のセンサー」と聞くと、地震や嵐の時だけ動けばいいと思われがちですが、実はそうではありません。平時の「何でもない日常のデータ」をコツコツと蓄積し続けていることこそが、いざという時の減災において極めて大きな意味を持ちます。平常時の平均的な数値、いわゆる「ベースライン」が分かっているからこそ、私たちは初めて「いつもと違う」という異常事態を客観的に認識できるのです。
たとえば、建設現場での安全管理について考えてみましょう。工事エリア内外の気圧差を常にセンサーで監視することで、強風による仮設壁の倒壊リスクを事前に察知することが可能です。普段の数値を把握しているからこそ、わずかな気圧の変化が「倒壊の予兆」であることを確信できるのです。このように、平時の計測データは災害時の意思決定を支える強力なエビデンスとなります。
センサーは「街の意思決定」を早くする
センサー単体でも非常に有用ですが、それらが集めた膨大なデータ(ビッグデータ)をAIや3Dシミュレーションと組み合わせることで、街全体の防災能力は飛躍的に向上します。データに基づいた迅速な意思決定は、一分一秒を争う避難指示において多くの命を救う鍵となるのです。
最近では、国土交通省などが推進している「3D都市モデル(PLATEAUなど)」を活用した、デジタルツインの構築が進んでいます。これは、現実の街を丸ごとコンピューター上に再現し、そこに現地の水位計や雨量計からのリアルタイムデータを流し込む技術です。これにより、「今、どの道が冠水していて、どのルートを通れば最も安全に避難できるか」を瞬時にシミュレーションできるようになります。これは過去のデータに基づく予測ではなく、現在の実測値に基づいた「動的な防災計画」になるのです。
まとめ:小さな技術が大きな安心をつくる

私たちの暮らしを守るために、街の目立たない場所で黙々と働き続けるのがセンサーです。センサーは単なる計測機器として働くだけでなく、見えない危機を可視化し、私たちが適切な行動をとるための「産業の眼」としての極めて重要な役割を果たしています。
もし、身の回りの施設や自治体の防災システムでどのようなセンサーが使われているか興味を持たれたら、ぜひ一度、株式会社クローネのサイトをご覧ください。さまざまな計測方式を持つ多数のセンサーを取り扱っています。











