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【IoT導入の決定版】設計から運用まで!失敗しないための勘所と成功事例

2025.08.21

IoTの導入で業務効率化や新価値創出を目指す企業は多いですが、デバイスを「つないだだけ」でプロジェクトが停滞するケースは少なくありません。今回は、IoTプロジェクトが直面しがちな「壁」と、その「壁」を乗り越えるための具体的な方法について解説します。

 

なぜ、あなたの会社のIoTは「つなぐだけ」で終わってしまうのか?

IoT導入の成功率を高めるためには、まず失敗の典型的なパターンを理解することが不可欠です。多くのプロジェクトが「PoC(概念実証)」の段階で停滞してしまうのには、明確な理由があります。

 

|PoCがゴールになってしまう

PoCは、特定の技術やアイデアが実現可能かどうかを小規模に検証する重要なプロセスです。しかし、この「検証」自体が目的化し、PoCを成功させることがゴールになってしまう現象、いわゆる「PoC疲れ」に陥る企業は後を絶ちません。

この原因は、PoCの段階で「本格運用」の視点が欠落していることにあります。**通信コスト、デバイス管理、セキュリティといった本格運用時の課題を度外視してスモールスタートを切ると、**いざ本格展開する際に壁にぶつかり、プロジェクトは塩漬けになってしまうのです。

 

|運用を見据えたIoTが設計されていない

真のビジネス価値を生むIoTとは、安定した「運用」があって初めて成り立ちます。日々生成されるデータをいかにビジネスに活かすか、増え続けるデバイスをいかに効率的に管理し、コストを最適化し続けるか。この「つないだ後」の運用フェイズをプロジェクトの初期段階から織り込むことが、成功と失敗を分ける最大の要因と言えるでしょう。

 

これさえ押さえればOK!IoTシステムの全体像と構成要素

運用を見据えた設計のためには、まずIoTシステムが何で構成されているのかを正確に理解する必要があります。

IoTシステムは、大きく分けて以下の4つのレイヤーで構成されています。それぞれが連携することで、価値ある仕組みが成り立ちます。

  • デバイス: 現場で物理的なデータを取得する「五感」の役割を担います。温度センサーやカメラ、GPS、モーターの振動を検知する加速度センサーなど、目的によって多種多様なデバイスが存在します。
  • ネットワーク: デバイスが集めたデータをクラウドに送る「神経網」です。セルラー(LTE/5G)、Wi-Fi、LPWAなど、用途、データ量、設置環境、コストに応じて最適な通信手段を選択することが重要です。
  • プラットフォーム: 送られてきた膨大なデータを蓄積、処理、分析する「頭脳」です。データの可視化、AIでの分析、外部システムとの連携などが行われ、単なるデータが価値ある「情報」へと昇華します。
  • サービス: プラットフォームで処理された情報をユーザーが実際に利用するための「インターフェース」です。PCの管理画面、スマートフォンのアプリ、現場担当者へのアラート通知などがこれにあたります。

 

システムの要、「通信」におけるSORACOMの優位性

この4つのレイヤーの中で、特にプロジェクトの拡張性やコスト、セキュリティを大きく左右するのがネットワークレイヤーです。PoC段階の数台ならまだしも、数百、数千台のデバイスをセキュアかつ低コストで安定的にクラウドへつなぎ続けることは容易ではありません。ここに、IoTプラットフォーム「SORACOM」の強みがあります。

  • 柔軟な拡張性: 数台で動作検証(PoC)を行い、その後数万台以上へ拡張するといった柔軟なスケールアップが可能です。
  • コスト効率: IoT 向けに最適化された料金プラン により、多くのデバイスを低コストで運用できます。
  • 強固なセキュリティ: データを インターネットを経由せず にクラウドへ送信できるので、情報漏洩や不正アクセスのリスクを大幅に低減します。
  • クラウド上での一元管理: 管理画面(ユーザーコンソール)や API を使えば、モバイル回線の制御やリモートアクセス、データ転送設定、ユーザー管理、利用料金の管理などを WEB ブラウザやプログラムから簡単にできます。

 

IoT運用フェーズの失敗と成功を分ける分岐点

ここでは、多くのプロジェクトが躓く「運用の壁」を解説します。

  • 集めたデータを塩漬けにしない: 「とにかくデータを集めよう」と、目的が曖昧なままデータ収集を開始。結果、膨大なデータがクラウドストレージに蓄積されるだけで活用されず、サーバー費用だけがかさみます。たとえば、「熟練担当者の発注作業を自動化し、年間500時間の工数を削減する」という明確なゴールを設定することで。収集すべきデータが定まり、明確な費用対効果を実現しました。
  • デバイスと通信のセキュリティリスクをケアする: コストを優先し、デバイスを公衆インターネット経由でサーバーに接続すると、デバイスの脆弱性を突かれて不正アクセスされ、情報漏洩やプラントの不正操作といった重大なインシデントに発展してしまいます。セキュアな閉域網を構築することで、セキュリティ懸念を解消し、迅速な遠隔対応が可能なります。
  • 想定外の通信費・保守費を防ぐ: PoCから本格展開に移行した後に、ファームウェアの更新などで想定外の大容量通信が頻発し、通信費が予算を圧迫することがあります。普段は低速・低価格なプランで運用しつつ、必要な時だけ遠隔から高速プランに変更するといった柔軟な運用を実施するのがよいでしょう。
  • デバイスの追加にも耐えられる設計: 運用規模を100台から1万台規模にする際にサーバーの処理能力やデータ管理の仕組みが追いつかず、システム全体の高額な再設計が必要になることがあります。初期設計からスケールアウトを前提とし、クラウドの自動拡張機能などを活用することで、デバイスが急激に増加してもスムーズな運用を実現できます。

 

SORACOM活用・導入事例に学ぶ成功の型

実際の成功事例から「成功の型」を学びましょう。

  • 工場の見える化・予兆保全: データに基づいた予兆保全により、突発的なライン停止を大幅に削減。東洋製罐では、コロナ禍でもSORACOMの遠隔アクセスサービスで開発を遅滞なく進めました。データという共通言語で現場と管理部門の連携を深め、全社的なDXマインドの醸成にも貢献しました。
  • 社会インフラの遠隔監視・スマート保安: JR東日本では、点検コストを大幅に削減し、異常発生時の迅速な初動対応でサービスの信頼性と安全性を向上。担当者の負担も大幅に軽減されました。
  • 在庫管理・店舗DX: ベイシアでは、店舗巡回の移動時間を削減し、人材育成など付加価値の高い業務へ時間を振り分けられるようになりました。

 

まとめ:IoT導入成功の鍵は、信頼できるパートナーとの拡張性ある設計

IoTプロジェクトを成功に導くためには、単にデバイスをインターネットにつなぐだけでなく、「つないだ後」の運用フェーズ全体を見据えた、拡張性・セキュリティ・コスト効率の高いシステムを初期段階で設計することが何よりも重要です。

そして、その複雑な要件をクリアし、自社のビジネス課題と技術を最適に結びつけるためには、深い知見と豊富な実績を持つ信頼できるパートナーの存在が不可欠です。

株式会社クローネでは、SORACOMの強力なプラットフォームを活用し、お客様の課題解決に向けてIoT導入の企画から開発、最も重要な「運用」までを一気通貫でサポートします。詳細については、株式会社クローネまでぜひお問い合わせください。

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