加速度計・加速度センサとは?動作原理と実用例を解説
運動の変化をとらえる目的でさまざまな分野において活用されている計測器として、加速度計が挙げられます。今回は、加速度計の原理、仕組み、種類、利用例について解説していきます。
目次
加速度計とは
加速度計とは、物体の振動や運動における加速度を測定する装置です。加速度とは、物体の速度変化を表す単位です。たとえば、車が静止した状態から時速50km/hになるのに10秒かかったとすると、加速度の平均は50km/h÷10秒で、毎秒5km/hと表せます。
加速度を測ることで、進んでいる方向や、人間が歩いた歩数や、物体が向いている方向(横向きか縦向きか)などを判断できるようになるのです。こうした特徴を生かして、加速度計は車両、携帯電話、電子デバイスなどに活用されています。
加速度計の原理・仕組み
ニュートンの運動第二法則によると、加速度は力と質量によって以下のように表せます。
力(F)= 質量(m) × 加速度(a)
この式から、加速度aは力Fと質量mを使って次のように表現できます。
a = F / m
つまり加速度とは、単位質量を動かすのに必要となる力のことです。
このことは、車の発進に例えると理解が深まるでしょう。車が緩やかに発進する、すなわち加速度が小さいと、後部座席に押し付けられる力も小さくなります。しかし、車が急発進する、すなわち加速度が大きいと、後部座席に押し付けられる力も大きくなります。
加速度計では、この原理を利用して、一定質量をどれだけの力で押されたかを計測することで加速度を測っているのです。ある2つの時間の速度からだと加速度の平均しかわかりませんが、力を計測することで加速度をリアルタイムに計測できるようになります。
加速度計の代表例として、バネを使ったものがあります。下図のように加速度が発生したときの変位量を測って力に置き換えることで、加速度を測定できるのです。
加速度計の種類
加速度計にはさまざまな種類があり、変位量の計測方法によって、主に「機械式」、「静電容量式」、「圧電式」、「MEMS」などに分けられます。さらに、1軸だけの加速度を計測できるものと、3軸の加速度を計測できるものがあります。
|機械式の加速度計
機械式の加速度計は、ペンによって変位量を機械的に計測するものです。下図のように質量を持った物体にペンをつけることで、加速したときの変位量をペンで直接記録できるようになります。
機械式は地震計などで用いられることもありますが、多くの場合では、このあとに紹介する静電容量式や圧電式が用いられています。
|静電容量式の加速度計
静電容量式の加速度計は、紙の上にペンの跡をつけるかわりに、電気信号を発生させることで変位量(=力)を測定します。バネで動く物体にポテンショメータ(可変抵抗器)を取り付けることで、移動する物体が2枚の金属板との距離の変化を読み取り、その距離の変化から静電容量の変化を測定できます。静電容量の変化を力に変換することで加速度の測定ができるのです。
|圧電式の加速度計
圧電式の加速度計は、水晶のような圧電素子が圧迫されるときに発生する小さな電圧を利用して加速度を測定します。バネで動く物体が圧電素子に加える力が大きいほど大きな電圧が発生する原理を活用しているのです。その電圧を読み取ることで、変位量がわかるので(ひずみゲージの要領と同じです)、変位量から換算した力によって加速度が求められます。
|MEMS加速度計
MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsの略で、微小な電気的・機械的デバイスをシリコンチップに搭載したものです。MEMSは上記3つのようにバネを持たない構造になっているので、加速度計自体を小さくできるメリットがあります。
MEMSの例を模式図で表すと下図のようになります。電極Aと電極B、電極Cとの間に発生する静電容量を計測することで、電極Aの変位量を計測し、加速度に変換するのです。
加速度計の使用例
加速度計は、さまざまな産業分野に使われています。ここでは、代表的な例を3つ挙げていきます。
|自動車
自動車で使われる加速度計の代表例はエアバッグです。エアバッグは突然の衝撃を受けることで作動しますが、この突然の衝撃を検知するのが加速度計です。大きな加速度の減少を検知したセンサから信号が発信されることで、エアバックを動作させています。ほかには、路面状況に合わせて油圧を調整するアクティブサスペンションや、急ブレーキ時のタイヤのロックを防ぐABS(アンチロックブレーキシステム)、盗難を試みたときの異常な振動を検知するアラームシステムにも使われています。また、研究開発時の衝突・衝撃試験や、ショベルカーの傾斜制御(倒れ防止)に使われているのも加速度計です。
自動車分野でよく使われる加速度計が、3軸モジュール型です。たとえば、3軸モジュール型加速度計の「2422シリーズ」は、低ノイズ、低電圧(DC5V)、低コストで、加速度および振動を検知可能で、高い分解能(10μG)があり、温度変化の影響を受けにくい加速度計です。
|携帯電話
最近のスマートフォンは、ほとんどの機種で加速度センサが搭載されています。加速度センサを搭載することで、移動している方向を正しく認識でき、GPSと連携することで正しい位置情報を特定するのに役立っています。また、スマートフォンを傾けるとディスプレイが点灯するのも加速度センサが方向を検知しているからです。
|機械や設備の予兆検知
加速度センサは、機械や設備に使われる消耗部品の交換・修理タイミングを知らせる予防保全にも用いられています。たとえば、工場内の機械や設備に故障の兆候があると、正常運転時とは異なる振動が生じます。加速度計が異常な振動を検知することで、故障に至る前に消耗品を交換でき、故障を未然に防げるのです。
予兆検知でよく使われる加速度計が、1軸モジュール型です。たとえば、1軸モジュール型加速度計の「2012シリーズ」は、3軸型の「2422シリーズ」と同様に低ノイズ、低電圧(DC5V)、低コストで、高い分解能(10μG)をもち、温度変化の影響を受けにくい1軸型の加速度計です。
|パソコン
ノートパソコンのハードディスク・ドライブには、床に落ちる前に読み取り・書き込み用のヘッドを安全に格納することを目的に、落下を検出する加速度センサを搭載したものがあります。
|ドローン
ドローンは加速度計を用いることで、その飛行姿勢を安定させられます。
ドローンでよく使われる加速度計が、基板実装型です。たとえば、「1521シリーズ」は、高い分解能(7μG)に対応した加速度センサです。特に信頼性の高い性能や、極めて低いノイズ、長期安定性などが絶対条件となる用途で優れた性能を発揮します。
>>基板実装型の加速度計「1521 L、1521 Jシリーズ」
|機械製造
機械製造の場面で加速度計を用いることで、微細な加工状態を計測できるようになります。たとえば、切削加工時に加速度計を使って、加工状態を識別できる状態にする研究などが進んでいます。
機械製造で用いられる加速度計が、1軸モジュール型です。たとえば、1軸モジュール型加速度計の「2240シリーズ」は、頑丈かつ軽量で、IP67に準拠した密閉型チタンケースと、IP61に準拠した特殊コネクタを持つハイエンドの加速度計です。
|航空宇宙関連
航空宇宙の分野における加速度計の使用例として、慣性航法装置があります。慣性航法装置とは、航空機の加速度を積分計算し、速度、移動距離、航空機の位置、目的地までの距離、飛行時間等を計測するためのものです。
航空宇宙関連でよく使われる加速度計が、基板実装型です。たとえば、「1531Jシリーズ」は、非常に高い分解能(12μG)をもち、高温度(最大175℃)でも使えるハイエンドの加速度計です。
>>基板実装型の加速度計「1521 L、1521 Jシリーズ」
まとめ
加速度計・加速度センサは、単に物体の向きや進行方向を特定できるだけでなく、異常状態を検知して安全装置を動作させることにも役立ちます。株式会社クローネでは、お客様のニーズにあわせてさまざまなタイプの加速度計・加速度センサをご提案可能です。加速度計の選定にお困りなら、ぜひ株式会社クローネまでお問合せください。