圧力計の選び方は”測る相手”で変わる【空気・蒸気・ガス・水・油で押さえる5つの注意点】

圧力計は外見が似ていても、中身(材質・耐圧・対策部品)は用途によって大きく異なります。失敗を防ぐ最大のコツは、種類やスペック表を見る前に「何を測るのか=測る対象物」から逆算することです。今回は、現場で多い5つの対象物(空気・蒸気・ガス・水・油)ごとに、選定で外せないポイントを整理していきます。
目次
圧力計は「測る対象物」で選ぶ理由

圧力計選びの出発点は、メーカーや型番ではなく「測る対象物(流体)」です。なぜなら、同じ「0〜1MPa」を測る場合でも、相手が脈動する圧縮エアなのか、高温の蒸気なのか、腐食性のガスなのか、粘度の高い油なのかで、選ぶべき仕様が変わってしまうからです。
対象物が変わると、主に次の4つが変化します。
- 必要な圧力レンジ(測る圧力帯の大きさ)
- 接液部の材質(流体に直接触れる部分の素材)
- 脈動・高温などへの対策(針の暴れや熱から計器を守る工夫)
- 安全要件(防爆・漏れ対策など)
「ブルドン管かデジタルか」と種類から入ると迷いがちですが、対象物から入れば選択肢は自然に絞れるようになります。
対象物が違っても外せない3つの選定軸

対象物別の話に入る前に、どんな流体でも必ず確認したい3つの共通軸を押さえておきましょう。
|①圧力レンジ(フルスケール)の決め方
圧力レンジは、常用圧力がフルスケールの60〜75%に収まることを目安にしましょう。常用圧が上限ギリギリだと精度が落ちやすく、寿命も縮みます。逆に上限が大きすぎると、肝心の常用域で目盛りが細かく読みにくくなります。脈動やサージ(急な圧力変動)がある流体では、最大圧を見込んで余裕を持たせましょう。
|②接液部の材質
接液部の材質は、主に次の3タイプに分けられます。
以下、一般的な材質と得意な流体・用途です。
- 真鍮(黄銅):空気・水など、腐食性のない一般用途。安価で汎用的
- ステンレス(SUS):蒸気・薬液・屋外など、耐食性・耐熱性・衛生が必要な用途
- ダイヤフラムシール付き:腐食性・高粘度・スラリー(異物混じり)など、内部を流体に触れさせたくない用途
|③脈動・高温・安全への「対策部品」
圧力計が「すぐ壊れる」原因の多くは、脈動・高温・危険性への対策不足です。たとえば、以下のような対策が考えられます。
- 脈動・振動 → 耐震圧力計
- 高温 → サイホン管(流体を冷やして受圧部を守る部品)
- 危険・漏れ → 防爆仕様、ダイヤフラムシール
【対象物別】空気・蒸気・ガス・水・油の選定ポイント

ここからは、代表的な5つの対象物について、「起きやすい問題」と「必要な対策・仕様」をセットで見ていきましょう。
|空気(圧縮エア)
圧縮空気用では、脈動対策と適切なレンジが要です。一方で材質は汎用でも問題ありません。コンプレッサーや空圧機器のエアは、コンプレッサー由来の脈動で針が小刻みに暴れ、読み取りにくくなりがちです。針受け部の摩耗も早まります。脈動が大きい場合は耐震(グリセリン入り)タイプなどを使います。
|蒸気
蒸気圧を測る場合は、高温対策と耐熱材質が必須となります。蒸気は高温なので、そのまま圧力計につなぐと、ブルドン管やシール材が熱で劣化し、誤差や故障の原因になります。そこで活躍するのがサイホン管です。U字やとぐろ状の管の内部に溜まった水(ドレン)が蒸気を一度冷やし、受圧部に高温を直接伝えないようにします。接液部はステンレスなど耐熱・耐食材質を選び、レンジはボイラ圧に合わせます。
|ガス
ガスを計測する場合は、安全要件(防爆・漏れ対策)を最優先にします。可燃性・毒性・窒息のリスクがあるため、防爆エリアでは防爆仕様、漏れを断ちたい場合はダイヤフラムシールや気密構造を選びます。腐食性ガスは材質を厳選し、高圧ボンベには高圧レンジと安全構造を備えた計器を使います。
|水
水圧を計測する場合は、サージと腐食・凍結への備えをしましょう。水で見落とされがちなのが、バルブの急閉などで生じるウォーターハンマー(圧力サージ)です。瞬間的な圧力上昇が計器を傷めるため、耐震タイプなどでやわらげます。さびや腐食にはステンレス接液部、汚水・スラリーにはダイヤフラムシールが有効です。
|油
油圧計測の場合は、耐震+高圧・耐圧構造が定番となります。油圧ユニットや建設機械、プレスなどの油圧ラインは、ポンプ由来の強い脈動と振動が常につきまといます。これを放置すると針が激しく暴れ、読めないうえに寿命も縮みます。耐震仕様になっているものであれば、内部の液が振動を吸収し、針を安定させて視認性と耐久性を両立します。高圧に耐えるレンジ・耐圧構造を選び、粘度が高ければダイヤフラムシールも検討します。
選定でやりがちな失敗と回避法

最後に、現場で繰り返されがちな3つの失敗と、その回避策をまとめます。いずれも「対象物を起点に考えていない」ことが共通の原因です。
- レンジを常用圧ギリギリで選ぶ → 精度低下や針の振り切れに。常用圧はフルスケールの60〜75%を目安にしましょう。
- 対策部品を省いてしまう → 「すぐ壊れる」の典型です。脈動・高温・腐食には専用部品(耐震・サイホン管・ダイヤフラムシール)を利用しましょう。
- 取付条件の確認漏れ → 付かない・見えないを防ぐため、接続ねじ(RねじかGねじか)・外径サイズ・取付向きも最初に確認しましょう。
まとめ:「対象物→必要な仕様」で選べば失敗しない

圧力計選びは、対象物が決まれば、①圧力レンジ → ②接液部の材質 → ③対策部品 → ④安全要件の順に詰めるだけで、最適な1台にたどり着けます。
なお、測った値を「記録できる資産」にしたい工程では、デジタル圧力計という選択肢もあります。株式会社クローネでは、高精度デジタル圧力計KDM30シリーズをはじめ、Bluetooth対応のKDM30-α BT、無線出力対応のKDM30-α MWなど、用途に合わせて選べるラインアップをご用意しています。
測定対象物を起点としたご相談も歓迎です。流体・圧力レンジ・設置条件をお聞きしたうえで、最適なモデルをご提案いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。














