計測機器や各種センサの原理・使い方を徹底解説

津波を予測する仕組みとは?海底センサから警報発表までの流れをわかりやすく解説

「津波警報」「予想される津波の高さ 3m」といった情報を目にする機会がありますが、そのような予測にはどのような技術が使われているのでしょうか。今回は、津波を予測する仕組みについて、地震発生から警報発表までの流れ、津波観測に使われるセンサ技術、そして日本が誇る海底地震津波観測網(S-net/DONET)まで、計測器メーカーの視点からわかりやすく解説していきます。

 

津波はなぜ予測できるのか?【予測の基本的な考え方】

津波予測が成り立つ最大の理由は、津波が「物理法則にしたがって伝わる波」であり、地震の情報がわかれば津波の規模と到達時刻を推定できるからです。津波は、海底で発生した地震によって海底の地殻が隆起・沈降し、その変動によって海水が大きく押し上げられる(または引き込まれる)ことで発生します。

「津波」と「高波(風浪)」は見た目が似ていますが、発生メカニズムがまったく異なります。高波は風が原因で海面だけが動くのに対し、津波は海底から海面まで海水全体が動くため、エネルギーの規模がけた違いに大きいのです。津波は物理法則にしたがって伝わるため、地震の震源位置や規模、断層モデルなどの情報から、おおよその津波の高さや到達時刻を推定できます。

 

津波予測の仕組み【地震発生から警報発表までの流れ】

地震が発生してから津波警報が発表されるまでのプロセスは、大きく3つのステップに分けられます。

|ステップ1:地震の観測と解析

津波予測の第一歩は、地震そのものを正確かつ迅速に捉えることです。地震が発生すると、全国に設置された地震計や海底観測網が地震波を検知します。これらのデータをもとに震源の位置(緯度・経度・深さ)と地震の規模(マグニチュード)を迅速に推定し、気象庁は地震発生後約3分(一部は最速2分程度)で津波警報・注意報を発表することを目標としています。

|ステップ2:津波予報データベースとの照合

津波予測の核心となるのが、気象庁が保有する「津波予報データベース」です。このデータベースには、日本周辺で想定されるさまざまな地震(断層モデル)について、あらかじめ津波のシミュレーション結果が膨大に蓄積されています。

|ステップ3:津波警報・注意報の発表

データベースの検索結果に基づき、各沿岸地域に到達すると予想される津波の高さと到達時刻が算出され、津波警報・注意報が発表されます。
津波警報・注意報には、予想される津波の最大波の高さに応じて以下の区分があります。

区分 予想される津波の最大波の高さ とるべき行動
大津波警報 3mを超える ただちに高い場所へ避難
津波警報 1mを超え3m以下 沿岸部や川沿いから離れ、高い場所へ避難
津波注意報 0.2m以上1m以下 海から離れ、海に近づかない

出典:気象庁「津波警報・注意報、津波情報、津波予報について」

 

津波を観測するセンサ技術【海底から沖合まで】

津波予測の精度を支えているのは、海底から沖合、沿岸に至るまでさまざまな場所に設置された観測センサです。ここでは、津波観測に使われる主要なセンサ技術を紹介します。

|水圧計(海底津波計)

水圧計は、海底に設置され、海水の圧力変化を計測することで津波を検知するセンサです。津波観測において最も重要な計測機器の一つです。海底に設置された水圧計の上には、常に海水の重さ(水柱圧力)がかかっています。津波が通過すると海面が上昇し、水圧計にかかる圧力も増加します。水圧計はこの微小な圧力変動を高精度に検出し、津波観測に活用されます。

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|地震計(加速度計・速度計)

海底に設置された地震計は、海域で発生した地震の揺れを直接検知し、地震の規模・震源を迅速に特定するためのセンサです。津波予測の精度は地震の解析精度に直結するため、海底地震計の役割は極めて重要です。
陸上にある地震計だけでは、海域で発生した地震の情報が到達するまでにタイムラグが生じます。海底地震計は震源の直上や近傍で地震波を直接捉えることができるため、より早く、より正確に地震の規模を把握できます。

関連記事:加速度計・加速度センサとは?動作原理と実用例を解説

|GPS波浪計

GPS波浪計は、沖合に設置したブイにGPS受信機を搭載し、海面の上下変動をリアルタイムで計測する観測装置です。海底に設置される水圧計が「海底の圧力変化」から間接的に津波を捉えるのに対し、GPS波浪計は「海面の高さの変化」そのものを直接計測するという違いがあります。GPS波浪計は、港や沿岸から15〜20km程度の沖合に設置されることが多く、津波の伝播方向によっては、沿岸に到達する前に波形を捉えられる場合があります。水圧計の海底データとGPS波浪計の海面データを組み合わせることで、観測の信頼性と精度がさらに向上します。

 

海底地震津波観測網とは?【S-netとDONETの全体像】

ここまで紹介してきたセンサ技術を最大限に活かすために構築されたのが、日本が世界に誇る海底地震津波観測網です。

S-net(Seafloor Observation Network for Earthquakes and Tsunamis along the Japan Trench)は、東日本大震災(2011年)の教訓を受けて整備された、世界最大級の海底観測網です。北海道沖から千葉県房総半島沖に至る太平洋海底に、約5,700kmの光海底ケーブルで結ばれた約150か所の観測点が展開されています。各観測点には、地震計と水圧計を組み合わせた観測装置が設置されています。S-netの最大の意義は、震源に近い海底で地震と津波を「直接」観測できる点です。陸上の地震計だけに頼っていた時代と比べ、津波警報の発表精度と速度は飛躍的に向上しました。

DONET(Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis)は、南海トラフ地震への備えとして開発された海底観測網です。熊野灘と紀伊水道沖に計51か所の観測点が設置されており、南海トラフの想定震源域を重点的に監視しています。多様なセンサを組み合わせることで、地殻変動から大きな地震動、津波まで、あらゆる信号を一括で捉えることが可能になっています。DONETのデータは、気象庁の防災情報の高度化にも活用されており、南海トラフ地震への備えを支える重要な観測基盤となっています。

参考:海底地震津波観測網

 

まとめ

今回は、地震発生から警報発表までの流れ、津波観測に使われるセンサ技術、日本が誇る海底観測網について幅広く解説しました。津波の予測は、水圧計・地震計・GPS波浪計といった高精度な計測センサ、それらを結ぶ光海底ケーブルの通信インフラ、そして膨大なシミュレーションを蓄積した予報データベースの総合力によって成り立っています。

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